医受験 合格する人・しない人 vol.2

中庸 ― Golden Mean ― が大切

先日、ある塾生に「あなたは勉強しすぎだからもっと休みなさい」と諭す機会がありました。ツイッターでもつぶやいたのでご覧になった方もいるかもしれません。普段、「もっと勉強しましょう」と鬼または般若の形相で愛の鞭をふるうのが私の仕事なのですが ― 5 時起床、5時半に自宅を出て6 時前に勉強開始、10 時半から本科の時間割に沿って21 時半までプログラムをこなし、放課後は終電ギリギリの24 時近くまで勉強、帰宅して1 時過ぎに就寝―これには少々危険を感じました。

 

教 室 長  瀬 戸  雅 美
教 室 長  瀬 戸 雅 美

受験勉強中のしかるべき時期には、これに類する集中学習で「突破」を図るべき時機もあります。例えば、前半の履修が終わって後半の実践演習に入っていく前の“夏” などがそれに当たります。また本番直前になれば、緊張から自然とこんな生活になるでしょう。しかしながら、人並み外れて強い心身をもつ人でない限り、この生活を一年間ずっと継続できる人はいません。頑張り過ぎの反動で体調を崩し→そのせいで欠席→ショックで過度に落ち込み→取り返そうとまた無理をして…これを繰り返した結果、一年で合格できるポテンシャルのあった人がもう一年かかってしまった例や、悲劇にも、途中でドロップアウトしてしまった例もあります。たとえよいことでもやり過ぎは禁物、適度なバランスを保つことが大切です。

 

受験生の睡眠時間について、昔は「四当五落」と言いました。現代では、根性論ではなく科学的データに基づいて6 ~ 8 時間は必要といわれています。もちろん個人差はあって、中には4時間でも問題ないという人もいます。しかし、“普通の生活” にとって問題ないレベルと、受験勉強にとって問題ないレベルには違いがあるのです。殊に、社会人経験のある再受験生の中には「夢のために勉強できるいまは最高の毎日だ」「在職中、残業は当たり前で一日12 時間ぐらいの勉強は余裕です」という方がたくさんいます。が、実は、これがあぶないのです。 

 

仕事には、一瞬の気の緩みも許されない真剣勝負の時間がある半面、意識を緩めて身体だけを機械的に動かしている時間もあります。一方、受験勉強では、意識を緩めて手だけを動かしている時間には、何の意味もありません。それは作業時間、休憩時間であって、勉強時間ではありません。勉強時間の中味-その質と密度は、常に、限りなく高くなければいけないのです。 

 

これに関連してもう一点、受験生は“睡眠(導入)剤”の服用を控えてください。もしくは、やむをえず服用する場合、その期間は受験勉強期間にカウントされないと覚悟してください。長い人生の中で、この種の薬のお世話になる時期があるのはいまや珍しいことではなく、むしろそのような時期もあって然るべきです。しかしながら、あくまでも私の経験上ですが、薬の種類や量がどうあれ、この服用中に学力が伸びた例は一度もありません。特に、偏差値が60に到達する前の段階では、ほぼ100%、下がります。

 

不足があれば、目的が達成できないのは当然ですが、一方で過剰・過激なところがあれば、本末転倒な結果に終わってしまいます。最上の状態は、中庸 ― Golden Mean ― を保ってこそ、発揮されるのです。