塾長談話 vol.2

デジタルを支配するのはアナログな身体である。

EBM 化,医療の高度情報化が進めば進むほど,生身の人間である医師の役割は大きくなる。(EBM とはEvidence-BasedMedicine の略で,「証拠に基づいた医療」の意)。「証拠」には有効性・科学性においてのヒエラルキーがあり,それを見極めることは,データベースやコンピュータには無理だ。目の前にいる患者の病状と,データベースにある臨床治験のデータを見比べて一致させるのは,人間の役割である。結局のところ,最終的に判断するのは,膨大なデータを前にした医師,および医師から説明を受けた患者自身であるということになる。 このように,医療の科学化・EBM 化と生身の人間の役割について考えると,医療以外の日常生活においても同様の事態が生じていることにも気付くことができるだろう。 

 

塾 長   原 田  広 幸
塾 長 原 田 広 幸

私たちは,常日頃,インターネットやメディア上の無数の情報に接しているが,今日,そのアクセス可能範囲は,時間的・空間的にほぼ無限定の広がりを獲得している。携帯かPC でググれば(google で検索すれば),いつでもどこでも,たいていのことは調べることができる。しかし,一方で,高度な情報や知識になればなるほど,検索結果のデータの優劣を自分で見極め,正しい情報はどれなのかを判断しなければならなくなる。 

 

そこで重要になるのは,すでに頭の中にある知識,とりわけ,正確に記憶され整理された脳内情報である。これらの情報は,日頃の勉強の繰り返しの中で獲得されていくものであり,「覚える」「暗記する」ものでもある。それが,情報化の進展とともに,軽視され,テクノロジーの操作能力の方がはるかに重視されるようになってきている。 

 

受験勉強は,伝統的に必要とされ価値が置かれてきた「物知りである」ことを目標とするトレーニングである。当然のことながら,試験最中にテキストや参考書は見ることができない。検索も出来ない。(それをやると10 時のニュースで報道されることになる。)自分の脳内の情報を正しく,しかも素早く引き出し,答案用紙に書き込まなければならない。基本的に「覚えて」おかなければ仕事にならないのが受験なのである。 昔は「博覧強記」というほめ言葉があった。幅広く読んでいてよく知っていること(ひと)という意味である。「博覧」にはコツはないが,「強記」(よく覚えていること)にはコツがある。それは,書くこと,声に出すこと,繰り返すこと,この3 つである。板書や教科書以外の先生の言葉をメモする,気づいたことや疑問点を書き込む,ノートを色分けする,書き写す,教科書を音読する,「なるほど」と呟いてみる,目をつぶって声に出して解答を再現する,授業の直後に復習する,飽きるまで繰り返す,10 回繰り返して音読する…。 

 

コツを実践するこれらの作法は,すべて「身体運動」である。非常にアナログで,退屈な作業かもしれない。逆説的だが,デジタル化が進めば進むほど,アナログの必要性は以前にもまして高まってくる。それは,アナログが希少になるからではなく,デジタルがアナログなしではワークしないからなのである。皆さんも,もっと身体(アナログ)を意識して,受験勉強を進めることにしてはどうだろうか。