誌上特別講義“+α” vol.2

知っていれば受験に役立つ(!?)、各科目の先生から、 毎回ちょっとした小話をお届けするコーナー。

遺伝の問題は、大学受験のみならず、医師国家試験までついてまわる。

理 科 主 任 三 宅 善 嗣 講 師
理 科 主 任 三 宅 善 嗣 講 師

[第96回医師国家試験より]
 5歳の男児。走るのが遅く、転びやすいことを主訴に来院した。周産期に異常はなく、歩行開始は1歳7ヶ月であった。両側腓腹筋の仮性肥大がみられる。血清生化学初見:LDH 1,500単位(基準176〜353)、CK 2,500単位(基準10〜40)、乳酸10mg/dl(基準5〜20)。生検筋の免疫組織化学染色でジストロフィンが染色されなかった。
 次子が患児と同一疾患である確率はどれか。
  a. 1/8 b. 1/4 c. 1/3   d. 1/2 e. 1/1

 Duchenne型筋ジストロフィーは筋ジストロフィーの約半数を占める最も頻度の高い疾患であり、天才物理学者ホーキング博士が罹患していることで有名である。X染色体劣性の遺伝形式をとり、ジストロフィン遺伝子の異常により引き起こされる。ジストロフィンは筋細胞膜関連細胞骨格蛋白質であり、筋細胞膜を内側から裏打ちする。本疾患は2〜4歳頃に歩行異常で発症し、筋力低下と筋萎縮が進行して10歳頃までに自力歩行不能となる。30歳頃に呼吸不全、心不全などで死亡することの多い、予後の悪い疾患である。血液検査では、血清クレアチンキナーゼ(CK、ここでは筋破壊の指標と考えてよい)値が正常の10倍以上と著しい高値を示す。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH、細胞破壊の指標)も上昇する。
 Duchenne型筋ジストロフィーの場合、若年で死亡するため、この問題のケースでは両親は健常者であり、母親が保因者であると考える。よって、正常ジストロフィン遺伝子をA、Duchenne型筋ジストロフィー遺伝子をaとすると、父親はXAY、母親はXAXaと表すことができる。すると、この両親から生まれる 子供はXAXA、XAXa、XAY、XaYの4通り考えられるが、このうち疾病が発現するのはXaYである。したがって、確率は1/4となり、bが正解。最初の子供が患児であることは、次子が患児であることとは独立の事象であることに注意。

 この問題が解けた人は医師になれる日も近い!? かくいう私も医師国家試験の勉強中…。