誌上特別講義“+α” vol.4

知っていれば受験に役立つ(!?)、各科目の先生から、 毎回ちょっとした小話をお届けするコーナー。

担当:藤本 正厚 先生 ~今回のノーベル賞から~

藤 本 正 厚 講師
藤 本 正 厚 講師

 2012年のノーベル生理医学賞は日本の山中伸也教授と英国のサー・ジョン・ガードン博士が受賞された。山中先生のiPS細胞の研究は新聞その他で一斉に紹介されたが、ガードン先生の業績については、日本ではそれほど報道されなかったようだ。しかし、生物を選択している受験生諸君には、おなじみの名前であろう。アフリカツメガエルの小腸上皮の核を初期化する実験は教科書や参考書で広く紹介されている。
 ノーベル賞受賞者が発表された際、ある生徒さんが「ガードンってまだ生きているんだ。あれはこんな最近の実験だったんですね。」と言われた。私も高校時代、生物を教わった恩師が「私の大学での指導教授は、ドイツ留学中、シュペーマンについて勉強していたんだ。」とおっしゃった時、また、学生時代、クエン酸回路、オルニチン回路の解明をしたクレブス博士の死亡記事を見た時、似たような感想を持ったのを思い出す。
 教科書や参考書で紹介されている事実は、何か遠い歴史上の出来事のように勘違いしがちである。これは日本における科学教育で、科学史、研究史という分野があまり重視されていないため、時代感覚がつかみにくいということもあろう。しかし、生物という科目に限れば、それにもまして、20世紀に入って、生化学、生理学が著しい発展を遂げ、20世紀後半からは分子生物学の発達など、ほかの理科科目に比べ、とりわけ、新しい話題が教科書に掲載されているという事情に拠ろう。
 このような事情で、生物の入試問題は次々新しい事柄が出題され受験生にとっては手ごわいものとなることも多い。「どう対策すればいいのですか?」と聞かれることもある。私はまず、嫌だと思わないこと。新しいことを知る機会なのだから、楽しいことだと思う知的好奇心をもつことが大事だと思う。嫌だと思えば容易に理解できることも難解に思える。それに生きているものは究極のところ、どんなものでも同じように生命の原理に従って生きている。新しい事柄に見えてもこれまで学習して来た自然の原理、法則には則っている。
 実は知らないことはそんなにない。考えればわかる、という風に強く思うことが難問解決の秘訣と思っている。